海運株(日本郵船・商船三井・川崎汽船など)は高配当?徹底比較【2026年8月】

    この記事でわかること

    • 海運業の仕組み(船の種類・運賃の決まり方)
    • 海運株が上がる時・下がる時の構造
    • なぜ海運株はこれほど高配当になっているのか
    • 大手3社+NSユナイテッド・飯野海運の5社比較
    • 各社の事業内容・強み・配当方針・成長戦略の個別分析
    • 【速報】日本郵船によるNSユナイテッド海運へのTOB(公開買付)の全貌

    目次

    海運業の仕組み

    海運が担う役割

    私たちが日常生活で使うスマートフォン・自動車・石油・食料品の多くは、海を越えて運ばれてきます。実は、世界の貿易量の約90%が海上輸送で賄われています。

    💡 海運業とは: 船を使って世界中の港と港の間で貨物を運ぶビジネスです。航空貨物より単価が低く大量輸送に適しており、重量物・大量品の長距離輸送では海運が唯一現実的な手段です。

    運ぶモノで船の種類が変わる

    海運株を理解するには、まず「どんな船でどんな貨物を運ぶか」を知ることが重要です。
    船の種類によって、運賃の決まり方や市況の特性が大きく異なります。

    船の種類運ぶ貨物主な用途
    コンテナ船工業製品・日用品など家電・衣類・食品など雑多な貨物
    バルクキャリア(ばら積み船)石炭・鉄鉱石・穀物など資源・農産物の大量輸送
    タンカー原油・石油製品・LNGエネルギー輸送
    自動車専用船完成自動車トヨタ・ホンダなどの完成車
    LNG船液化天然ガスガスのマイナス162度での輸送

    💡 BDI(バルチック海運指数)とは: ロンドンのバルチック海運取引所が算出するばら積み船の運賃指数です。世界の貿易・景気の先行指標として投資家に広く使われています。数値が高いほど運賃が高い(海運会社の収益が良い)状態です。

    運賃はどのように決まるのか

    海運の運賃は、基本的に「船を借りたい人(荷主)」と「船を貸す人(海運会社)」の需要と供給で決まります。

    運賃が上がる条件:
      貨物が増える(需要増)→ 船が足りなくなる → 運賃上昇
      地政学リスクで航路が変わる → 輸送距離が伸びる → 船不足 → 運賃上昇
    
    運賃が下がる条件:
      景気後退で貨物が減る(需要減)→ 船が余る → 運賃下落
      新造船が大量就航 → 供給過剰 → 運賃下落

    💡 重要ポイント: 海運会社は船という巨大な固定資産を持ちながら、運賃は市場次第で大きく変動するビジネスです。これが「海運は市況産業(シクリカル産業)」と言われる理由で、株価・配当の変動が大きい原因でもあります。


    投資家が知るべき海運株変動の構造

    株価上昇

    ① 世界経済が好調で貿易量が増える
    中国・米国・欧州の製造業・消費が活発になると、コンテナ船・ばら積み船の需要が増え運賃が上昇します。特に中国の鉄鋼・建設需要はバルク運賃に直結します。

    ② 地政学リスクで航路が迂回する
    直近の最大例が2026年のホルムズ海峡問題です。2026年2月28日、米国・イスラエルによるイラン攻撃を受け、エネルギー輸送の要衝であるホルムズ海峡が事実上封鎖される事態となりました。日本郵船を含む海運大手3社は航行を停止し、株価は一時18年ぶりの高値を更新しました。航路が変わると「船が遠回り」→「実質的に使える船の数が減る」→「運賃急騰」というメカニズムが働きます。

    過去にはスエズ運河の封鎖(2021年)、紅海問題(2024年〜)も同様の効果をもたらしました。

    ③ 新造船の建造が少なく供給が絞られている
    造船所の建造能力には上限があり、新造船の竣工まで2〜3年かかります。既存船が多く退役・解体されているタイミングと重なると、供給不足で運賃が高止まりします。

    ④ エネルギー価格の上昇(タンカー株)
    原油・LNG価格が上昇すると、エネルギー輸送需要が増えタンカー運賃が上昇します。地政学リスクとエネルギー高は同時に起きやすいため、特にエネルギー輸送特化の海運株が恩恵を受けやすいです。

    ⑤ 為替(円安)
    海運会社の売上はほぼドル建てです。円安になると円換算の売上・利益が増加し、業績・配当が改善します。

    株価下落

    ① 世界景気の悪化
    景気後退期は貿易量が減少し運賃が急落します。リーマンショック時(2008年)にはBDIが高値から約94%も急落しました。

    ② 新造船の大量竣工
    好況期に発注が集中した新造船が一斉に完成・就航すると、供給過剰で運賃が急落します。2016年前後や2023〜2024年のコンテナ船供給過剰がその例です。

    ③ 地政学リスクの緩和・停戦
    逆説的ですが、停戦観測が出ると「運賃下落」連想で急落するリスクもあります。紅海・ホルムズの緊張が緩むと、航路の正常化→船の実質供給増加→運賃下落が想定されるためです。

    ④ 円高
    円安が追い風になるのと同様に、急速な円高は海運株にとって逆風です。ドル建て売上が円換算で目減りします。

    ⑤ コンテナ運賃の需給正常化
    コロナ禍(2021〜2022年)に異常高騰したコンテナ運賃は、その後の供給回復で正常化しました。コロナバブルの崩壊は海運各社の業績悪化・減配につながりました。

    2026年の最新市況

    2026年現在は、中東の地政学リスクによる市況変動はあるものの、株価は堅調に推移しています。ホルムズ海峡封鎖問題は二転三転しており、2026年4月に入ると「停戦合意→即座に破綻→米軍による逆封鎖」と事態が二転三転し、単純な上昇要因としては機能しにくい局面に入っています。

    🔗 関連記事:VIX(恐怖指数)とは?見方・水準の意味・暴落の予兆シグナルを解説


    なぜ海運株はこれほど高配当なのか

    理由① コロナバブルで積み上がった莫大な内部留保

    2021〜2022年のコロナバブル期、コンテナ運賃は歴史的な高騰を見せ、日本郵船・商船三井・川崎汽船の3社は合計数兆円規模の超過利益を計上しました。この利益は配当に回された部分が大きく、「コロナバブルの恩恵が配当として分配された」という特殊な事情があります。

    理由② 株主還元方針の明確化

    各社はコロナ禍の超過利益を機に、配当性向の明示・下限配当の設定など「株主還元方針の明確化」を進めました。強固な財務基盤と積極的な株主還元方針により、長期投資の対象として注目の銘柄です。

    理由③ 株価が業績ほど上がっていない

    海運株は景気循環性が高いため、市場から「利益が安定しない企業」と評価されてPERが低くなりがちです。利益が多くても株価がそれほど上がらないため、結果として配当利回りが高く見えます。

    ⚠️ 海運株の高配当は「業績連動型」が多く、業績が悪化すれば大幅減配・無配になるリスクがあります。「高配当だから安心」ではなく、「業績と連動する変動配当」という性質を理解したうえで投資することが重要です。


    5社を一覧比較(2026年8月15日現在)

    指標日本郵船(9101)商船三井(9104)川崎汽船(9107)NSユナイテッド(9110)飯野海運(9119)
    株価約5,550円約4,900円約2,600円約10,600円前後(TOB価格)約1,527円
    時価総額約2兆3,000億円約1兆5,000億円約6,000億円約2,500億円約3,000億円
    配当(2026年3月期実績)225円200円120円310円
    配当利回り(概算)約3.7%約3.9%約4.6%※TOBのため特殊約3.2%
    PBR約0.9倍約0.8倍約0.7倍約1.3倍約0.8倍
    主力事業コンテナ・バルク・エネルギーコンテナ・LNG・ドライバルクコンテナ(ONE)・エネルギードライバルク・内航タンカー・LNG
    特徴日本最大の総合海運会社LNG・安定収益型ONE経由のコンテナ特化ドライバルク専門・TOB進行中タンカー・安定配当

    各社IR資料、Yahoo!ファイナンス(2026年8月時点)


    日本郵船(9101):日本最大の総合海運会社

    基本情報と事業概要

    項目内容
    証券コード9101(東証プライム)
    設立1885年(明治18年)。日本最古の海運会社の一つ
    売上高(2026年3月期)約2兆4,236億円
    営業利益(2026年3月期)約1,386億円
    純利益(2026年3月期)約2,117億円
    配当金(2026年3月期)225円(予想配当性向45.0%)
    配当利回り3.7〜4.1%(2026年3月時点)
    下限配当年間200円(自社設定)
    TradingView提供のチャート

    強みと事業の特徴

    日本郵船は「日本最大・世界有数の総合海運会社」という規模の優位性を持ちます。

    コンテナ船(ONE): 日本郵船・商船三井・川崎汽船の3社が共同出資した「ONE(Ocean Network Express)」を通じてコンテナ事業を展開しています。

    エネルギー輸送: LNG(液化天然ガス)船・タンカーを多数保有し、エネルギー輸送でも強固な地位を持ちます。長期契約が多く安定収益に貢献しています。

    非海運事業の拡大: 港湾・物流・航空など非海運事業も展開し、「海運だけに依存しない収益構造」を構築しています。

    配当方針と推移

    日本郵船は配当性向40%を目安とし、年間1株あたり200円を下限とする配当方針を掲げています。「下限配当200円」という明確な基準は、投資家にとっての安心感につながっています。

    配当推移(1株あたり)

    決算期配当金主な背景
    2022年3月期1,600円(分割前換算)コロナバブルで超過利益
    2023年3月期1,400円(分割前換算)運賃正常化・大幅減配
    2024年3月期480円減配継続
    2025年3月期280円安定化へ
    2026年3月期225円(予想)配当性向45%・下限200円を維持

    成長戦略と今後の注目点

    日本郵船は中期経営計画「Sail Green, Drive Transformation 2026」のもと、以下を成長戦略の柱としています。

    • グリーン戦略: アンモニア燃料船・水素船・ゼロカーボン燃料への移行で環境規制に対応
    • NSユナイテッド子会社化: ドライバルク事業の強化(後述)
    • 非海運事業の拡大: 再生可能エネルギー(洋上風力関連)・港湾・物流への投資

    評価

    強み: 日本最大の総合海運会社という規模、下限配当200円という明確な安心感、ONEへの出資によるコンテナ事業の安定収益化。

    懸念点: コロナバブル期の超過利益が正常化し、減配が続いている。コンテナ市況次第では配当がさらに下がるリスク。


    商船三井(9104):LNG・安定収益を重視した「攻めない守り」

    基本情報と事業概要

    項目内容
    証券コード9104(東証プライム)
    設立1884年(大阪商船)をルーツに持つ
    売上高(2026年3月期・参考)約1兆7,000〜1兆8,000億円
    配当金(2026年3月期)200円
    配当利回り3.9%
    TradingView提供のチャート

    強みと事業の特徴

    LNG船・エネルギー輸送で高い安定性: 商船三井はLNG(液化天然ガス)輸送に強みを持ちます。LNG船は長期契約(10〜20年)が主流のため、運賃市況に左右されにくい安定収益が期待できます。

    コンテナ事業(ONE): 日本郵船・川崎汽船と共同のONEを通じてコンテナ事業を展開。

    フェリー・内航事業: 国内フェリーの事業も持ち、日本国内での存在感もあります。

    「BLUE ACTION 2035」: 商船三井の中期経営計画。環境対応・洋上風力発電関連の海洋事業を成長エンジンとして位置づけています。

    配当方針と推移

    商船三井は業績に連動した配当方針を採用しています。コロナバブル期には超過利益を配当で還元しましたが、現在は利益水準の正常化に伴い配当も調整されています。

    コンテナ船事業の特性として: コンテナ船事業は運賃変動の影響を受けやすく、コンテナ運賃が上昇すると利益押し上げ要因、下落すると業績悪化要因となります。ONEの収益がコンテナ運賃に連動するため、商船三井の利益もONEの業績に大きく影響されます。

    成長戦略と今後の注目点

    • 洋上風力関連: 日立・JALとともに海洋からのCO2直接回収実証へも参画するなど、脱炭素関連ビジネスに積極的
    • LNG長期契約の積み上げ: 世界のエネルギー転換が続く中、LNG需要は中期的に堅調と見られており、長期契約船の積み上げが安定収益の源泉

    評価

    強み: LNG船という長期安定収益の柱を持ち、収益の安定性は3社の中で最も高い。

    懸念点: ONEのコンテナ市況依存は残る。LNGから再生可能エネルギーへの転換が進む長期的な変化への対応が課題。


    川崎汽船(9107):ONEへの集中と事業選択の会社

    基本情報と事業概要

    項目内容
    証券コード9107(東証プライム)
    売上高(2026年3月期)約9,100〜9,500億円(参考)
    配当金(2026年3月期)120円
    配当利回り4.6%(5社中最高水準)
    4〜6月期売上高前年同期比+17.1%増(増収)
    TradingView提供のチャート

    強みと事業の特徴

    川崎汽船は大手3社の中でコンテナ船への集中度が最も高い企業です。ONEへの出資を通じてコンテナ事業の利益を享受しています。

    エネルギー事業への軸足移動: コンテナ一辺倒から脱却し、LNGタンカー・再生可能エネルギー関連(浮体式洋上風力発電の基礎運搬など)への展開を進めています。

    「MOVING forward 2030」: 川崎汽船の長期ビジョン。脱炭素・デジタル化・事業の選択と集中を掲げています。

    配当方針と推移

    年間225円の配当金は、川崎汽船(120円)を大きく上回り、商船三井(200円)とほぼ同水準です。川崎汽船は3社の中で配当金額の絶対値は最も低いですが、配当利回りは株価水準が低いため最も高くなっています。

    川崎汽船は「配当性向30%」を基本方針としつつ、業績に連動した変動配当を採用しています。

    成長戦略と今後の注目点

    • ONEを通じたコンテナ事業: ONEがどの程度コンテナ市況の変動をこなせるかが業績の核心
    • エネルギー関連新事業: 洋上風力の施工船・浮体輸送など、脱炭素時代の海運需要を取り込む

    評価

    強み: 配当利回りは5社中で最高水準(約4.6%)。コンテナ市況が回復する局面では最もダイレクトに恩恵を受ける。

    懸念点: ONE経由のコンテナ依存度が高いため、コンテナ市況の変動に最も影響を受けやすい。日本郵船・商船三井と比べると事業の多角化が遅れている。


    NSユナイテッド海運(9110):日本郵船TOBで上場廃止へ

    ⚠️ 【最重要情報】日本郵船によるTOB(公開買付)進行中

    NSユナイテッド海運(9110)は、2026年7月31日に日本郵船からのTOB(株式公開買付)を発表しました。TOB成立後は上場廃止となる予定のため、通常の投資判断とは異なる特殊な状況にあります。

    TOBの概要

    項目内容
    TOB発表日2026年7月31日
    買付者日本郵船(9101)
    買付価格1株10,600円
    TOB発表直前の終値(7/31)8,040円
    プレミアム約+31.84%
    買付総額約1,206億円(総額は約1,568億円)
    TOB開始予定時期2026年11月下旬〜12月下旬ごろ
    TOB完了・上場廃止予定2027年4月中旬
    公開買付代理人野村證券
    TradingView提供のチャート

    TOB後の株主構成

    取引後の株式保有比率は日本郵船が83.33%、日本製鉄が16.67%となる。NSユナイテッド海運株式は、所定の手続きを経て上場廃止となる見込みです。

    配当への影響

    2027年3月期の配当はTOBの成立を条件に無配(0円)へ修正されました。通常の配当は期待できなくなりますが、TOBに応募した場合は1株10,600円での売却が可能です。

    TOBへの応募について

    NSユナイテッド海運のTOBに応募するためには、野村証券の口座に株式を移管する必要があります。他の証券会社で保有している場合は、野村証券への口座移管手続きが必要です。

    NSユナイテッド海運とはどんな会社か

    💡 「NS」の由来: NSユナイテッド海運の「NS」は「Nippon Steel(新日本製鉄)」の頭文字です。2002年に新日本製鉄系の海運会社と旧日本鋼管(NKK)系の海運会社が統合して誕生しました。

    製鉄業は、鉄鉱石や石炭など大量の原材料をオーストラリアやブラジルから海上輸送しなければ成り立ちません。「安定的に、安くモノを運ぶ」ために、鉄鋼メーカーはかつて自前で海運会社を保有していました。これが「系列海運」と呼ばれる仕組みです。

    事業の特徴: ドライバルク(石炭・鉄鉱石などの乾燥バラ積み貨物)輸送を主力とし、日本製鉄との長期輸送契約が安定収益の基盤です。

    なぜ日本郵船はNSユナイテッドを子会社化したいのか

    NSユナイテッド海運の船隊、顧客契約、営業組織を取り込むことは、ドライバルク事業の規模拡大と配船効率の改善につながる可能性があります。

    コンテナ市況の正常化が進む中、日本郵船はドライバルクという安定収益事業を強化する戦略的意図があります。

    配当推移(参考・TOBにより今後は無配予定)

    決算期配当金(1株)
    2024年3月期約230円
    2025年3月期約250円
    2026年3月期(実績)310円(期末205円+中間105円)
    2027年3月期(予想)0円(無配)(TOB成立条件)

    出典: NSユナイテッド海運IR、kabu48.com

    NSユナイテッド株を現在保有している方へ

    TOBに参加するかどうかの判断ポイントをまとめます。

    TOBに応募するメリット: 市場価格の変動リスクなしに1株10,600円で確実に売却できる

    TOBに応募しないリスク: 上場廃止後は市場で売却できなくなる。強制的に株式買取(スクイーズアウト)の手続きに移行する可能性が高い

    8月15日現在の株価: TOB発表後に株価はTOB価格(10,600円)へのサヤ寄せが進んでいます。市場での売却よりTOBへの応募が有利となるケースが多い見込みです

    ⚠️ 重要: TOBへの参加手続きには野村証券への口座移管(他社保有の場合)が必要です。開始予定時期(2026年11月下旬〜)を確認しながら準備してください。


    飯野海運(9119):タンカー特化の「静かな高配当株」

    基本情報と事業概要

    項目内容
    証券コード9119(東証プライム)
    設立1899年(127年の歴史を持つ老舗海運会社)
    株価(2026年8月3日)約1,527円
    配当利回り3.2%
    4〜6月期売上高前年同期比+23.2%増(大幅増収)
    4〜6月期営業利益前年同期比+47.7%増(大幅増益)
    TradingView提供のチャート

    強みと事業の特徴

    飯野海運は大手3社と異なり、タンカー(石油製品・ケミカルタンカー・LNG関連)に特化した中堅海運会社です。

    石油製品タンカー: ガソリン・軽油・ナフサなどの精製石油製品を運ぶタンカーが主力事業です。LNGタンカーへの展開も進めています。

    不動産事業(イイノビルディング): 東京・霞ヶ関にある「イイノビルディング」(飯野ビル)を保有・運営する不動産事業も展開しており、海運業績に左右されない安定収益の柱です。

    💡 飯野海運の独自性: 海運だけでなく東京の一等地の不動産を持つことで、「海運市況が悪い時期でも不動産収益でカバーできる」という他社にない安定性を持っています。

    配当方針と株主優待

    配当方針: 業績連動型の配当を維持しつつ、安定的な還元を意識しています。配当に加えて株主優待制度も導入しています。

    株主優待: 500株以上の株主に対して、保有株式数と継続保有期間に応じた株主優待ポイントを進呈し、優待商品カタログから選択できます。また、イイノホールでの落語・講談会への招待(※2026〜2027年は施設改修工事のため休止中)という文化的な優待も行っています。

    2026年の最新業績

    飯野海運の4〜6月期決算では、売上高が前年同期比23.2%増、営業利益が47.7%増と大幅増収増益を達成しました。ホルムズ情勢を背景としたエネルギー輸送需要の高まりが収益を押し上げています。

    成長戦略と今後の注目点

    • LNG輸送事業への参入強化: 石油製品タンカーからLNG関連への事業拡大を進めています
    • 不動産(イイノビルディング)の活用: 2027年のイイノホール改修工事完了後の新展開
    • 中小型タンカーのニッチ戦略: 大手が手掛けにくい中小型タンカーへの特化で安定的な市場地位を維持

    評価

    強み: タンカー特化という明確なニッチポジション、不動産という海運以外の安定収益源、株主優待という独自の魅力。大手3社より地味だが、安定性と利回りのバランスが良い。

    懸念点: 大手3社と比べると事業規模が小さく、単独での市況対応力は限られる。エネルギー転換(脱化石燃料)が長期的には石油製品タンカー需要に影響する可能性がある。


    海運株への投資家としての向き合い方

    海運株は「高配当株」として安全か?

    海運株の高配当は魅力的ですが、以下の点を必ず理解したうえで投資判断することが重要です。

    観点内容
    配当の安定性業績連動型が多く、市況悪化で大幅減配リスクあり。「下限配当」を設定している日本郵船は相対的に安定している
    株価変動リスクシクリカル産業のため株価変動が大きい。高配当でも株価下落で損失が出る可能性がある
    長期保有の前提市況サイクルの波を乗り越えることを前提にした長期投資に向いている
    分散投資の重要性海運株だけに偏らず、ポートフォリオの一部として位置づけることが重要

    各社の位置づけ(投資スタイル別おすすめ)

    投資スタイルおすすめ理由
    安定配当重視日本郵船(9101)下限200円の明確な方針、事業多角化
    高利回り重視川崎汽船(9107)配当利回り約4.6%で5社中最高水準
    LNG・安定収益商船三井(9104)LNG長期契約による収益安定性
    不動産×海運飯野海運(9119)海運+不動産の二重安定収益
    TOB参加NSユナイテッド(9110)TOB価格10,600円への応募(上場廃止予定)

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    よくある質問(FAQ)

    海運株はなぜ株価が大きく動くのか?

    海運業は「市況産業(シクリカル産業)」と呼ばれ、世界経済や地政学リスクによって運賃が大きく変動します。運賃が変わると売上・利益が直接変わるため、株価の振れ幅も大きくなります。また、コンテナ・バルク・タンカーそれぞれの市況が異なるタイミングで動くため、複数の海運銘柄に分散することでリスクを抑える効果があります。

    NSユナイテッド海運(9110)のTOBに応募すべきか?

    現在株式を保有している場合、TOB価格(10,600円)は2026年7月31日の終値(8,040円)に対して約+32%のプレミアムがついています。TOBが成立すると株式は上場廃止となり、市場での売却ができなくなる見込みです。多くのケースでTOBへの応募が合理的ですが、応募にあたっては野村証券への株式移管が必要な点と、開始予定(2026年11月下旬〜)のスケジュールを確認してください。なお、2027年3月期の配当はTOB成立を条件に無配となる予定です。

    海運株に投資するなら1社に絞るべきか?

    大手3社(日本郵船・商船三井・川崎汽船)はONEを通じたコンテナ事業という共通点がある一方、各社の強みが異なります。タンカー・LNG・バルクなど異なる船種への分散や、飯野海運のような不動産収益も持つ企業も加えることで、特定の市況変動への集中リスクを分散できます。ただし、海運株全体は世界経済・地政学リスクに連動するため、ポートフォリオ全体のうち海運株の割合を一定程度に抑えることも重要です。


    まとめ

    日本の海運業は日本郵船・商船三井・川崎汽船の大手3社が牽引し、NSユナイテッド・飯野海運がそれぞれ独自のニッチで存在感を示しています。

    この記事のポイントをまとめると:

    • 海運株は世界貿易量・地政学リスク・新造船供給・為替(円安)の4つの要素で動く
    • 高配当の背景はコロナバブルの超過利益と積極的な株主還元方針の明確化
    • ただし業績連動型配当が多く、市況悪化で大幅減配リスクがある点を必ず理解する
    • 日本郵船(9101):下限200円の明確な配当方針・日本最大の総合海運。NSユナイテッドTOBで事業拡大
    • 商船三井(9104):LNG長期契約による安定収益型。エネルギー転換への対応も積極的
    • 川崎汽船(9107):5社中最高の配当利回り約4.6%。コンテナ(ONE)依存が高く市況変動の影響を最も受けやすい
    • NSユナイテッド(9110):日本郵船によるTOB進行中(買付価格10,600円)。2027年4月に上場廃止予定
    • 飯野海運(9119):タンカー特化+不動産収益という独自の安定型。優待制度あり
    • 2026年8月は4〜6月期決算で各社が増収増益を達成。ホルムズ情勢の行方が今後の株価を左右する

    ⚠️ 免責事項: 本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品への投資を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任において行ってください。過去のパフォーマンスは将来の結果を保証するものではありません。海運株は市況変動が大きく、配当の大幅な変動・元本割れリスクがあります。

    出典・参考資料

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